カテゴリーエントリーポイント

理論

カテゴリーエントリーポイントとは、消費者が購買や利用を考える際に頭に思い浮かべる「状況」「きっかけ」「文脈」のことである。
たとえば、コーヒー市場においては「朝の目覚め」「仕事の合間の一杯」「友人との雑談」「リラックスしたい夜」などが典型的なエントリーポイントになる。
消費者は特定のブランドからではなく、まずこうした「利用文脈」から購買をスタートすることが多いため、ブランドがどの文脈で思い出されるかが競争力に直結する。

カテゴリーエントリーポイントの重要性


購買は「ブランド想起」から始まる
消費者は商品を購入する際、まず「そのカテゴリーで思い浮かぶブランド」を脳内で検索する。
このとき、「どんな状況やニーズからそのカテゴリーを思い出すか」がカテゴリーエントリーポイントである。

多様なCEPを押さえることが市場拡大につながる
消費者がブランドを想起する場面は一つではない。
複数のCEPを押さえることで、ブランドが想起される確率が増す。
例:スポーツドリンク → 「運動後」「熱中症対策」「夏の屋外」「受験勉強」など、文脈を広げて浸透させる。
→ CEPが多ければ多いほど、消費者がそのブランドを「使う理由」が多様化し、売上拡大につながる。

競合との差別化ではなく「参入確率」の勝負になる
従来のポジショニングは「差別化」を重視してきたが、実際の購買行動では、消費者は特定のブランドを強く区別していない
思い浮かんだものの中から「なんとなく」選ぶことが多い
したがって、差別化よりも「想起される頻度=参入の確率」を高めることが重要。
CEPを押さえることは、その確率を上げる戦略である。

カテゴリーエントリーポイント(CEP)を活用したマーケティング戦略

「カテゴリーエントリーポイントをいかに多く、そして強力に作り出すかが、現代のマーケティングにおいてブランドを成長させる鍵となっている。

 CEPの特定
定性インタビューや日記調査、SNS投稿分析などから、消費者が商品を欲するシーンや発話を抽出する
例)
スポーツドリンクであれば「運動後の水分補給」「熱中症対策」「二日酔い明け」「夏祭りでの屋外活動」など。
 
ブランドとCEPの結びつけ
広告やパッケージなどで、ブランドのイメージを定着させる。
例)
特定のシーンを描いた広告で、「その瞬間に思い出すブランド」として定着させる。
文脈を直接的に想起させる名称やコピー(例:「おやすみ前のリラックスティー」)。

 メディア・チャネル戦略
消費者の生活リズムや接触メディアを、CEPごとに最適化する。
例)
朝利用を訴求したいなら通勤時間帯の交通広告
夏の屋外利用ならイベント会場やスポーツ施設でのサンプリング

 
CEPポートフォリオの拡張
ブランドが複数のCEPを押さえることで、「思い出される確率」=メンタルアベイラビリティを高める。
例)
ビールブランドが「仕事終わり」「休日のバーベキュー」「スポーツ観戦」「正月の集まり」など複数の文脈で想起されると、市場シェア拡大に寄与する。
 
競合との差別化
他社が強く結びついていないCEPを開拓することで、独自のポジションを構築できる。
例)
カロリーゼロ飲料が「健康志向の外食シーン」で結びつきを強め、通常の炭酸飲料と差別化する。


独自のCEPを築いた成功事例

キットカット(Nestlé Japan)
「受験の応援」というCEPを構築し、季節需要を拡大。通常のお菓子利用に加え、新たな利用文脈を創出。

ポカリスエット(大塚製薬)
「運動後」だけでなく「日常の水分補給」「熱中症対策」というCEPを強調し、年間を通じての購買動機を拡張。




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